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自律神経症状

自律神経症状もレビー小体型認知症の人に良くみられるものです。レビー小体型認知症では、中枢神経系だけにレビー小体が出現するだけではなく、自律神経内(たとえば心臓や消化管)にもそれらが認められます。それによって自律神経症状をきたします。

自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」の二つで成り立っています。交感神経は、血管を収縮させ、血圧や脈拍を上げる作用があります。一方、副交感神経は血管を拡張させ、血圧や脈拍を下げる作用をになっています。通常、この両神系はバランスを保ちながら働いています。自律神経症状とは、この二つの神経がうまく切り替わらずに身体的不調をきたすものです。症状は一つだけではなく多岐にわたりますが、主だったものに、起立性低血圧、便秘、発汗異常、倦怠感などがあり、レビー小体型認知症の人は、こうした症状のうちさまざまな症状を併せ持つことがあります。

起立性低血圧
血圧の異常として多いのが、起立性低血圧です。これは起き上がったり立ち上がったりした際に、血圧維持のために機能するはずの交感神経がうまく働かず、心臓から送りだされる血液量が少なくなり血圧の調節がうまくいかず、しばしば失神や転倒を起こす危険があります。したがって、起き上がる際は体の向きを変えながらゆっくりと時間をかけて起き上がるようにします。

高齢者の場合、第二の心臓といわれている下肢の筋肉の脚力が衰えていて、心臓に戻る血流の働きが弱っていることも一因です。また、降圧剤や利尿剤といった内服薬も起立性低血圧を引き起こすと考えられます。失神は食後に起こることも少なくありません。消化に伴って血流が胃腸に集まり、そのため脳への血流が減るためです。また、排泄時にいきむことで血圧低下をもたらす場合があるため、注意が必要です。

起立性低血圧を軽減するには、対症療法として、弾性ストッキングの着用や、下肢筋力トレーニングの導入、食事を複数回わけて少量ずつとる、適度な塩分と水分をとるといった生活習慣を見直していくことが大切です。

体温調節障害
レビー小体型認知症では、しばしば体温の調節に障害を呈することがあります。これも自律神経症状の一つです。具体的な症状としては多汗や寝汗などがあげられます。人間は、発汗によって体温が上がりすぎるのを防いでいますが、その調節を担っている自律神経に異常をきたすため、こうした発汗異常が起こります。汗をひどくかくため、何度も着替えたり、夜間寝巻きを取り替えたりすることになります。

また、逆に皮膚の血管が拡張することで、低体温になりやすいのも特徴です。低体温は、手足の冷えとして現れることが多くありますが、上半身、顔だけ汗をかく一方で、手足が冷たいという人もいます。

ぬるめの入浴は、心身をリックスさせ交感神経と副交感神経のバランスを整える効果が期待できます。

便秘
便秘は、自律神経症状としてかなりのレビー小体型認知症の人に認められる症状です。

便秘をすると、腸内細菌のバランスがくずれ細菌が産生する物質が脳内物質に影響をあたえやすくなり、レビー小体型認知症の症状の増悪を引き起こします。幻覚や妄想の増強、意識レベルの低下、レム睡眠行動障害の増悪など症状全体に悪影響を及ぼし助長させます。また、腸閉塞につながります。
このため、外来では2日でないと、“イエローカードです”3日でないと“レッドカードです”とご家族・本人に伝えて注意を喚起しています。
便秘が解消されると、患者さんはよく「あたまがはっきりしてからだが動くようになります」と話されることが多いようです。
食事は、繊維質を多くとるように心がけてもらい、適度な運動が必要です。

頻尿/失禁
膀胱を調節する自律神経に障害があると、急に我慢ができないほど強い尿意を感じる「過活動性膀胱」が起きます。これは、たまっている尿の量とは関係なく膀胱の筋肉が収縮するため、日中または夜間に何度もトイレに行きたくなり、間に合わないと尿漏れや尿失禁につながってしまいます。

投薬にて調節が可能な場合がありますが、血圧を下げる作用もあるため、起立性低血圧がある場合は要注意です。

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