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パーキンソン症状

レビー小体型認知症は、パーキンソン病に特有のパーキンソン症状が現れるのが特徴です。
パーキンソン症状とは、安静時振戦・筋固縮・無動/動作緩慢・姿勢反射障害といった四大運動徴候のほか、字が小さくなる小字症、声が小さくなる小声症、顔が脂ぎる脂漏性顔貌、表情が乏しくなる仮面様顔貌、歩行時の前屈・すり足・小股・突進歩行、体が斜めに傾くななめ徴候(ピサ徴候)、嚥下障害などがあります。なお振戦は、パーキンソン病より出現頻度は少ない傾向です。

この症状は、中脳の黒質などが障害され、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン・アドレナリンが不足することから起こります。ドーパミンの量が20%以下になると症状が発現するといわれています。

パーキンソン症状の程度はHoehn&Yahrの重症度分類で評価します(一般的には”ヤールの重症度分類”と呼ばれています)。

 

I度:身体の片側のみに症状がある。症状はとても軽い。
II度:身体の両側に症状がある。姿勢を保つことができる。
III度:姿勢を保つことができない。1人での生活が可能。
IV度:起立・歩行はどうにかできる。1人での生活は難しい。 
V度:1人で起立・歩行ができない。日常生活に全面的な介助が必要。

 

運動障害以外の症状、自律神経症状;便秘・起立性低血圧・体熱調節障害・発汗調節障害なども認められます。

症状が進行してくると、歩行障害が問題になってきます。特に転倒が問題になり、頭部を打撲して硬膜下血腫あるいは脳挫傷を起こしたり、特に女性では大腿骨頚部骨折で手術するといったことになり、ベッド上生活の引き金になります。ある調査では、レビー小体型認知症の人はアルツハイマー病の人の10倍転びやすいという報告があります。
加えて、飲み込みが徐々に低下し嚥下障害が出現するようになり、誤嚥性肺炎を繰り返すようになるため、栄養管理の問題が浮上し、点滴管理にするのか、胃ろう増設による経腸栄養管理にするのか、といったターミナルケアに関わってくる事象へとつながってきます。

最近は、病棟回診で、大腿骨頚部骨折の患者さんが実はパーキンソン病であったとか、骨折後のリハビリテーション目的で転院してきた患者さんが、転院当日から幻覚・妄想を認めレビー小体型認知症であった、というできごとが稀ではないのが今の医療の現状です。

3)認知の変動および意識の変容、さらには一過性意識消失発作・失神

認知症は、「認知」に障害をきたすために認知症と呼ばれるわけですが、認知という概念は幅広く、さまざまな内容をさします。認知症の場合、「中核症状」がそれにあたります。具体的には、記憶や言葉・理解・判断などの能力が障害されたり低下したりします。

 

認知能力の低下の具体例

  • 記憶: 思い出すことができない。覚えられない。
  • 言葉: 言葉の意味がわからない。やりとりができない。
  • 理解: 頭にはいらない。理解できない。
  • 認識: それが何であるかわからない。
  • 判断: 良いか悪いのか、していいのか悪いのかの判断をくだせない。
  • 注意: 複数のことに注意がむけられない。
  • 計画: 計画が立てられない。準備が出来ない。
  • 手順: 物事の手順がわからない。
  • 使用: 道具やものの使い方がわからない。
  • 計算: 計算ができない。
  • 時間: 時間・日にち・曜日・季節がわからない。
  • 場所: ここがどこなのかわからない。
  • 人物: 相手が誰なのかわからない。

 

レビー小体型認知症の場合、この認知能力が、1日の中で、あるいは1週間、1ヶ月の間で激しく変動するのが特徴です。 わかりやすく言えば、頭がはっきりしている状態とボーッとしている状態が入れ替わります。いわゆる、しっかりしている時と一見うつらうつらしている、この状態のよいときと悪いときの波が激しいということです。これを「認知の変動」あるいは「意識の変容」といいます。これは、原因ははっきりしていませんが脳幹網様体賦活系(脳幹の中にある網目状のもので、呼吸・心拍・血圧などの調節機能ととともに、視床を介して、覚醒と睡眠に深く関わっています)の障害が指摘されています。
「ボーッとしている時とそうでない時はありませんか?」と医師に尋ねられて、「そういえば、日中、ボーッとしていることが多いわ」とか「言われてみれば、いいときと悪い時の差が激しいです。」などと、初めて気づくご家族も少なくありません。
レビー小体型認知症は、アルツハイマー病と比べて、初期には物忘れなどの認知障害はあまり目立ちません。物事をしっかり理解したり判断したりはできますが、一度この認知の変動・意識の変容が起こると、頭の回転が悪くなり、記憶力・判断力などが極端に低下して、ボーッとした状態になります。
このような状態で、「長谷川式認知症スケール」や「MMSE」といった認知機能検査をすると、極端に点数が低下することになります。また、実際に認知症外来で、はじめに「長谷川式認知症スケール」をすると良い点数で、次の「MMSE」を施行する間に“ボーッ”となり「MMSE」の点数が極端に下がり、認知の変動・意識の変容の証拠になる、というケースに時々遭遇します。

また、この認知の変動・意識の変容の際、特定の認知能力の低下がみられることがあります。極端に言葉が出てこなくなったり、いつでもできていた着替えや歯磨きなどができなくなったりという例です。なお、レビー小体型認知症は、視覚を司る後頭葉が障害されやすいため、視覚にまつわる認知能力が低下することが多々あります。たとえば、見間違い(誤認)や変形視が生じて、相手や場所がわからなくなる、あるいは物体との距離がつかめず、道具もうまく使えないといったこともあります。

なお、レビー小体型認知症の人は、前夜に充分な睡眠をとっているにもかかわらず、常にうとうとしていたり、日中に2時間以上眠ったりすることがあります。
これは、食事中あるいは、外来の待合室で待っているとき、また診察している最中にみられることも少なくありません。

この状態とは別に、活動している最中に急に意識をなくす、いわゆる“一過性で原因不明の意識障害”や歩行中などに、突然失神して転倒する”繰り返す転倒・失神”が起こり、救急車にて搬送され、搬送先の病院で精査してもわからず帰される、ということがよく起こっています。
ひるがえって考えると、お年寄りで、病歴に身体的精査をしても原因が判らない“一過性意識消失発作”“繰り返す転倒・失神”それに加え“救急搬送のエピソード”があったときには「レビー小体型認知症」をまず考える、ということだと思います。

認知能力を維持するには、介護者は認知能力が低下しているかどうか把握しておく必要があります。状態が把握できれば、大事な事を伝えたい場合、認知レベルが高い(頭がはっきりしている)ときに行うことができます。人によっては、認知能力の低下が起こるまえに、何らかの身体的サインが見られる場合があります。たとえば、とてもそわそわしたり、テーブルをコツコツと叩いたりなどです。
認知能力が低下してしまうと、料理をしたりテレビのリモコンを操作したりすることが難しくなりますが(これを実行機能障害といいます)、こうした能力を少しでも維持するには、折り紙がいいといわれています。新聞やチラシを折る程度のことでも、普段から続けることで効果がみられる場合があります。
なお、認知の変動とパーキンソン症状は連動していることが多くあり、認知能力が低下すると、動きや歩行も悪くなるような例がみられます。この際は、転倒に注意する必要があります。

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