認知症をあきらめていませんか?
まずは以下の認知症についての文章を読んで、正しいと思うものをチェックしてみて下さい。
□ 認知症はみな同じである。
□ すべての認知症はもの忘れが主症状である。
□ 認知症は治療できない。良くなることはない。
□ 認知症の進行を遅らせたり、発症を予防することはできない。
□ 認知症になったらあきらめるしかない。
(※答えはすべて「×」です)
「認知症」とは、大まかにいえば「記憶障害に加えて、失語(言葉の理解や発語が障害される)、失行(指示によってまた模倣して行う手の動作や肢位をとることができない、道具を上手く使うことができない)、失認(物や人が分からなくなる)、実行機能(物事を段取り・計画して実行する)が障害され、これらの障害が中核の症状となって生活(社会活動や職業活動)に支障をきたすようになった状態」のことをいいます。
認知症をもらたす疾患は実にたくさんありますが、主要なものとしてはアルツハイマー病、前頭葉側頭葉変性症、レビー小体型認知症、脳血管型認知症などが挙げられます。
もの忘れで始まるものはアルツハイマー病が有名です。
前頭葉側頭葉変性症には多くの疾患が含まれるため、実に多彩な症状を出しますが、典型的なものとしては、怒りっぽくなった、横柄になった、万引きをするようになった、甘いものが好きになった、同じことを繰り返すようになった、言葉の意味がすぐに分からなくなった、ごみ屋敷になった、お風呂に入らなくなった、尿臭がするようになった、手が使いにくくなった、転倒などが挙げられます。
レビー小体型認知症は幻視や意識の変容、REM睡眠障害、便秘、転倒などが主症状です。
脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血で障害される脳の部位によって症状が異なります。
認知症の鑑別については、最終診断は死後の病理診断を待たねばなりませんが、ただそれでは治療ができませんので、臨床診断をしていくことになります。
出現している症状から脳の病変部位を推測できますので、臨床症状と画像検査などの結果、病歴などから総合的に判断して臨床的に診断するのです。
ところで、ある認知症疾患(以後、疾患を省きます)を発病したらその先ずっと同じ認知症のままなのかというと必ずしもそうとはいえません。
認知症の進行によって病巣も拡がっていくことがあり、その場合は当然、病変部位に応じた症状も出現してきます。
つまり別の認知症とオーバーラップしていったり、場合によっては別の認知症へシフトしていくこともあるため、認知症の進行によって別の認知症を合併したり、別の認知症へ変化していくことは珍しくないのです。
実はこの「認知症は変化する」ということを認識することが、認知症の治療にとってとても大事なのです。
なぜかというと認知症によって治療法、特に治療薬の選択や投与量が全く異なるからです。
さらにいえば認知症の病期や出現している症状、発病からの経過、年齢、薬の効きやすさによっても治療薬を微調節していくことが認知症の治療には不可欠なのです。
間違った病態の認識に基づいて認知症薬が処方されてしまい、かえって症状を悪化させてしまったり、認知症そのものが進行してしまった例も少なからず経験しています。
したがって特に認知症の治療は、適切な臨床診断に基づいて行われる必要があるといえます。
治療がその方に合って、実際に認知症が良くなる例を私どもは日々経験しています。
逆に諸事情で薬が使えなかったり、その方に合わない治療やケア、環境要因などによって認知症が悪くなる例も日々経験しています。
今までの経験を通じていえることは「すべての方ではないが、時間がかかる方もいるが、認知症は適切な治療とケアによって良くなる」ということです。
あきらめる前に是非、当院の受診をご検討ください。
電話:03-6715-7873 (休診日 木曜、日曜、祝日、第5土曜)